木地師文化フォーラム-2022

滋賀県東近江市は木地師のふるさとして全国に発信する事業を行っていて、2022年7月18日に愛東コミュニティセンターで「木地師文化フォーラム」が開かれた。フォーラムは今回が4回目で3年ぶりの開催となる。また9月18日に東京上野で市主催の「木地師シンポジウム」が開かれる。
市公式Facebook「木地師のふるさと 東近江市」の告知で「このフォーラムは、ろくろを用いて椀や盆などの木地を作る職人である木地師が育んだ木の温もりの文化、漆工芸の文化への理解をより一層深め、全国各地とのネットワークを深めることを目指しています。」とあり、取材している木地師のふるさと君ヶ畑との関係もあるので参加してみた。

【プログラム】
第一部 講話
「木地師文化を育んだ東近江の森林」
森林総合研究所 山下 直子
アジア猛禽類ネットワーク 山﨑 亨

お二人で重複する部分もあったが「木地師文化を育んだ東近江の森林」をテーマに、山下さんは主に森林について、山﨑さんは植物と動物について、それぞれの視点から東近江の木地師発祥の地である鈴鹿山系にある小椋谷やその周辺についての講話だった。
木地師のふるさとである鈴鹿の森は東日本と西日本、日本海側気候と太平洋側気候が接する地域にあり、東近江市は鈴鹿の山々から琵琶湖まで続く豊かな自然がある。鈴鹿の奥山の冷温帯域に出現する落葉広葉樹林や、多種多様な植物や野生動物などが木地師の営みを支えた事など短い時間ではあったが資料を使い分かりやすく解説されてた。

第二部 講演
「漆に魅せられて」
漆作家/木地師 スザーン・ロス

石川県輪島市で漆作家・木地師として活動するスザーン・ロスさんは、イギリスのロンドン出身で若い頃に漆に魅せられて、漆の技術を身につけようと来日した。その後輪島で漆の勉強をして、現在は作家として活動しながら漆の魅力を海外などにも発信している。
講演では漆に魅せられて来日した後の技術を習得するまでの苦労話、輪島では川沿いの古い民家を自分たちで修繕したり改造して住んでいる事、その家での自然に囲まれた生活ぶりなどを聞くことが出来た。
そして縄文時代から続く漆の歴史や、漆の生産から輪島塗の制作工程などについても詳しく説明されていた。また国内での漆の生産が現在危機的な状況にある事や、漆や漆製品について今後の提案などもあり、熱くて中身の濃い内容の講演だった。

第三部 対談
漆作家/木地師 スザーン・ロス
木地師 北野 宏和
コーディネーター 筒井 正(東近江市参与)

「木地師文化と漆工芸の現在と展望」というテーマでスザーン・ロスさんと蛭谷で木地師の仕事をしている北野さんの対談があった。コーディネーターは小椋谷の永源寺町茨川出身で東近江市参与の筒井さん。
木地師や漆の仕事は、プラスチック製品が大量に出回る現在は継続が難しい職種であり今後については多くの困難がある。スザーン・ロスさんは漆製品や木製品を使うと生活の質が豊かになる事を説明し、漆が絶えないように応援するには「皆さん漆製品を買って使って下さい!」と会場に人達に呼びかけていた。
北野さんは木地師の仕事を若い人たちが始めたり、生活を続けられるような環境作りをしていきたいと抱負を語っていた。

彦根の古民家ー鹿島家住宅

鹿島家住宅の主屋

彦根市に残る「茅葺きとトタンを被せた屋根」の記録を進めている。現在までに調べた所では約220戸位残っていて、撮影した家が120戸になったのでやっと半分は終わった。
撮影に行くと解体されて無くなっている家がある一方で、現地付近で新たに発見する家も多くあり合計戸数はまだ確定していない。調べた家の撮影が終わっても、ある程度の見落としは仕方ないと思っている。まだ写真は整理中なのだが、形式を考えて一覧で見てもらえるようにしようと思っている。

撮影に行った時には出来るだけ声をかけて、撮影の趣旨をお伝えするようにしている。留守などで声掛けをしても応答がない場合や空き家などはそのまま撮影するが、在宅されている場合は建築年やトタンを被せた時期などをお聞きして分かれば記録している。
5月7日に肥田町にある1軒を訪ねた所、中で電動ノコのような音がしていた。玄関付近に看板らしきものがあったので、ノックすると男性が出てこられて撮影の趣旨をお伝えすると変わって奥様に対応して頂けた。撮影のお願いをすると快く許可して頂けて、この家について聞かせてもらったが、彦根市の市指定文化財になっているとの事だった。
帰ってから調べると、この家は「鹿島家住宅」で約150年前の江戸時代後期に建てられている。当時の農家の面影を良好に伝える数少ない住宅として平成22年3月16日に市指定文化財に登録されている。

現在はご夫婦で営む木製スピーカーの工房とショールームを兼ねた店「HORA AUDIO(ホラオーディオ)」として2015年の10月から利用されている。撮影は外観のみだったが、彦根市の資料によると当時の間取りや桶風呂などの古い物が残されている貴重な住宅との事である。屋根は現在トタンを被せてあるが、奥様はできれば将来茅葺きに戻したいとの希望があると話されていた。

鹿島家住宅-10
主屋の外観 門の左は外便所
鹿島家住宅-04
玄関前 左が「かわと」右が主屋
鹿島家住宅-11
水路に接した「かわと」から見た主屋